記事執筆:ミケ川(みけかわ)
1男(人)2女(猫)の父。
暇があれば携帯で息子と猫たちの写真を撮るのが趣味。
8歳から現在まで常に動物と暮らしており、肉球からペット保険まで動物関連の情報収集がライフワーク。
毎年暑い時期になるとニュースなどで話題になる熱中症ですが、人間以外、犬や猫などのペットにおいても熱中症について注意喚起がされるようになってきました。今回は、犬・猫などペットの熱中症の症状や原因、予防法、起きやすい季節や場所についてまとめました。
熱中症とは…?
熱中症とは、熱によって起こる様々な体の不調・障害の総称をいい暑さで体温のコントロールが出来ず、熱が体内にこもってしまっている状態です。こういった症状は、人間や犬猫な どのペット・牛や豚などの家畜でも起こります。
熱中症は人間では主に体力の弱い方に起きやすく、老人や子供は要注意です。特に地面がアスファルトなどの場合、子供は大人と比べより地面から近いため、反射熱にも注意が必要です。さらにペットの体高は人間の子供よりも低い場合が多く、気温が高く日差しが強い時の散歩等ではより注意が必要です。
熱中症と熱射病、日射病の違い。熱中症の種類。
今では熱中症という言葉が浸透していますが、以前は熱射病や日射病などとも呼ばれていました。これらは、厳密にはそれぞれ内容が異なります。
熱中症は前述のとおり、熱によって起こる様々な体の不調・障害の総称ですが、強い日光で熱中症になったのを日射病、締め切った室内や車内などでの高温により熱中症になった場合は熱射病です。
そのほかにも熱中症には種類があります
熱失神:
暑さで、皮膚血管の拡張が起き血圧が低下、脳への血流が悪くなり失神してしまうこと。
熱けいれん:
暑さで大量に汗をかき、水補給はしたが、塩分は採らず、血液の塩分(ナトリウム)濃度が低下した時に、足、腕、腹部の筋肉に痛みを伴ったけいれんを起こすこと。
熱疲労:
暑さで大量に汗をかき、身体が脱水状態になり全身に倦怠感や頭痛を起こすこと。
熱中症にかかりやすい年齢・犬種・猫種について
犬や猫も人間と同じように体力の弱い子犬・仔猫、老犬、老猫では熱中症にかかりやすく、 さらに犬種・猫種によってかかりやすさも違います。
犬の場合、短頭種と呼ばれる鼻が短い犬種(パグ、シーズー、ペキニーズ、ブルドッグ、フレンチブルドッグなど)がなり易いと言われ、シベリアンハスキーなどの寒冷地に住む犬種や長毛種、ダックスフンドなどの足の短い犬種或いは体高の低い犬種も要注意です。
猫の場合は、犬と比べ暑さには強いと言われていますが、長毛種や元々寒冷地に住むのノルウェイジャンフォレストキャットや、ダブルコートの猫は熱中症にかかりやすい可能性があります。
熱中症の原因
犬・猫などのペットも人間と同じように熱中症になるのは熱が溜まってしまうことが原因ですが、犬・猫は人間よりも熱中症になりやすいともいわれています。
理由としては、人間と違い全身が毛におおわれており、体温が放散しにくく、犬の場合口を開けて放熱したり(パンディング)、足の裏や鼻に汗をかく汗腺があるものの、人間のように全身で汗をかき上手に体温を下げることができないから、と言われています。
熱中症になりやすい環境
犬・猫については以下のような環境では熱中症になり易いと言えます。
例)
・気温が高い状況で照り返しの強い舗装道路上での散歩
・暑さが厳しい時間帯の買い物などで、野外にリードで繋ぎ、直射日光を浴びさせる
・公園やドッグランなどで、気温や湿度が高い状況で運動させる
・エアコンのない、換気がわるく温度がこもりやすい部屋や車内などの蒸し暑い環境下に長い時間お留守番させる
・留守番などで、高温で換気不十分なケージなどに入れる
また熱中症は夏のものだけと思われがちですが、室内に熱がこもってしまうような環境では、熱中症になることもあるので、油断しないようにしましょう。
熱中症の症状
ニュースなどで熱中症について報道があっても、たかが熱中症と思われる方もまだまだいらっしゃいます。
しかし、2018年度の統計では、熱中症による日本国内での死亡数は159人、搬送数は92710人となっており(※)、より熱中症になり易い、犬・猫にとっても身近で非常に危険な疾患である事が分かります。
※参照:総務省の「平成30年(5月から9月)の熱中症による救急搬送状況」
最悪命にもかかわる熱中症ですが、症状としては以下のようなものが挙げられます。
初期症状
・体温の急激な上昇
・激しいパンティングや呼吸困難
・多量のよだれ
・足元のふらつき
・虚脱(ぐったりすること)
・心拍数の増加、頻脈
・目の充血、歯肉の異常 など
初期症状の段階で異常に気が付くことが大切です。
体温の上昇は気が付きにくいですが、その他の症状は、目に見えて異常が分かります。ただ虚脱はただ疲れているだけと判断してしまい、進行してしまうこともありますので注意が必要です。
少しでも異常を感じたら木陰で休ませたり、体を冷やしたり、水分補給をするなどをしましょう。そうした応急処置で回復しなければ、すぐに病院に行きましょう。
中期・進行期症状
・嘔吐
・下痢
・チアノーゼ(舌や粘膜が真っ青になる症状)など
この段階で治療を行えないと非常に危険な状態になります。
嘔吐や下痢はその他の疾病でも起こる症状ですが、気温の高い場所での運動や、高温の場所に長時間にいた場合などは、熱中症を疑い病院に連れていきましょう。
末期・重症の症状
・けいれん発作や意識の喪失
・ショック症状(血圧低下などの症状)
・ARDS(急性呼吸促迫症候群)
・DIC(播種性血管内凝固症候群)
末期・重症になると、治療を行っても助からない可能性もあります。犬猫の症状の進行は早いため、初期段階でもあまり様子を見すぎると重症化することもあります。
熱中症の治療
飼い主の方ができる処置と動物病院で行われる処置があります。飼い主の方は熱中症が疑われた場合の応急処置を覚えておくとよいでしょう。
治療費は治療内容・動物病院によって異なりますが、初期症状での治療なら10,000円~20,000円程度と考えられます。入院や点滴などを行った場合はそれ以上の費用が掛かるケースも有りえます。
応急処置・初期段階の治療
体温が高くなっている場合は、まず体を冷やすことが重要です。体に冷たい水を直接かけたり、濡らしたタオルで体を覆ったりするほか、タオルを巻いた保冷剤や氷まくらを首の頚動脈の部分や内股、腋下などの被毛や皮膚が薄く体温が下がりやすい部分にあてて冷やすことも効果的です。また、意識があり、水が飲めるようなら新鮮な水分を十分に与えましょう。
上記のような処置は応急処置として自宅で行うことが可能ですが、処置後はすぐに動物病院で診てもらいましょう。
中期以降の治療
動物病院では、初期段階で行う処置と併せ、熱中症の進行状態によって脱水を補うための点滴治療やショック症状や脳炎を防ぐためのステロイド剤の投与などを行うこともあります。絶対安静が必要な場合、入院をすることもあり得ます。
熱中症の治療は、ペット保険では対象になるのか?
一般的に保険の対象になる可能があると言えますが、保険会社によって取扱いが違う可能性もございますので、個別確認を行うことが重要です
熱中症の予防
熱中症の予防は、まずどのような状況で熱中症になるのかを飼い主が認識することが重要といえます。本記事内の「熱中症の原因」であげたような状況に犬猫を絶対に置かないことです。 具体的には、以下のような予防策が考えられます。
①室内の温度を快適に保つ
気温・室温が高い時期や時間帯の室内でのお留守番では、風通しよくすることを心がけ、部屋から熱を逃がすようにしましょう。窓を開けておくことなどに防犯上問題がある場合は、電気代が高額になる可能性はありますが、エアコンをつけっぱなしにすることも検討しましょう。
ただしフローリングの場合はクーラーにより床が冷えすぎ、体調を崩すこともありますので、人間用の温度よりも多少高めの設定でもよいと言えます。
②車内で留守番させない
毎年のように人間の子供が車内に置かれて亡くなる事件がありますが、ペットにとっても閉鎖的で熱がこもりやすく、非常に危険な場所です。
そもそも、車内で留守番をさせない前提で動くようにしましょう。
③水を常備する
新鮮な水をいつでも飲みたいだけ飲めるように準備しておきましょう。
室内ではペット用自動給水器やお散歩などの短時間の外出時であっても、500mmのペットボトルや犬用の水筒は最低でも準備すると良いでしょう。
④気温が高い時間帯には散歩に行かない
気温が高い時間帯の散歩は熱中症の危険性が高く、特にアスファルトの道は絶対に避けましょう。反射熱による熱中症だけでなく、アスファルトが高温になっており、肉球の火傷にもつながります。
こうした時期、時間帯に散歩に出かける場合は、できる限りアスファルトなど地面からの反射熱が強い場所はさけ、日陰を選び、こまめに水分補給させるようにしましょう。
またキャリーバッグで移動するような場合は、中に保冷剤(ひえひえマット)を入れて熱中症にならないような対応をしましょう。
⑤気温が高い季節・時間帯には激しい運動はしない
気温が高く、直射日光が強い季節や時間帯には、激しい運動をしないようにしましょう。普段からアクティブで健康な犬であっても、熱中症になることはあります。犬の健康を過信しないようにしっかりと管理しましょう。
⑥気温の上昇をきちんとチェックする
天気予報などを常に確認し、時間帯での気温の情報を把握しましょう。
また、ペット保険のアニコム損保の公式Instagram*では、犬の熱中症週間予報を毎週金曜日に公開しています。全国主要都市10地点での週間予報となっており、「厳重警戒」「警戒」「注意」「やや注意」の4段階にわけて表示されています。
この情報は、Instagramのアカウントさえあれば、契約者以外でも確認することができます。
まとめ
熱中症は、人間にもペットにも起こりやすい病気で、死亡の可能性もある病気という認識が必要です。一方で、多くの場合ペットの熱中症は暑い場所、蒸す環境を避けるなどの予防の知識さえあれば防げる病気です。
正しい予防の知識と万が一の場合の応急処置方法を把握し、ペットの外出やお留守番を快適に過ごさせてあげることも飼い主のマナーといえるでしょう。
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